東京猫医療センター

東京江東区の猫専門病院

☆あけましておめでとうございます☆

2014-01-05

あけましておめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

ということで2014年!個人的にはどたばたした年明けを迎えたNARAです。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、1Fに一昨年から「猫とカフェラテ」というお話を書かせていただいて、第4章でずっと止まったままにしておりましたが、最終章まで書き上げました。受付にもおいてありますが、ここに最終章のみではありますが、載せさせていただきますね。

つたない文章ではありますが、少しでもほっこりしていただければなと思います。

少し早めに仕事を終えた涼子は遠回りをしていつものカフェに立ち寄った。

閉店時間間近の為か店内には、マスターと一組の家族しか居なかった。

「こんばんは」涼子はそのままカウンターに腰をおろした。

「このお時間に珍しいですね。」グラスに水を注ぎながらマスターはメニューを渡す。

「珍しく仕事が早く終わったの。今日は・・・久しぶりにカフェモカにしようかな!後スコーンも」

「かしこまりました。」マスターはメニューを下げた。

「今日は・・・彼いないの?」涼子は店内を見渡して言った。

「午前中はいましたよ。午後からは非番ですね。」マスターの答えに涼子はそっかぁと呟くと窓の外に視線を向けた。今にも雨が降りそうな空色だった。

「どうぞ」甘い香りが涼子の前に広がった。

「あれ?私シロップ頼んだかしら?」

「サービスでどうぞ。そのシロップ彼のお気に入りなんですよ。コーヒーに入れてもおいしいですよ。」マスターに言葉に涼子は少し頬を赤らめた。

「ありがとうございます。」

「あなたは彼に好意を寄せているのですね。」マスターの問いかけに涼子は目をまんまるにして顔を上げた。

「どうしてそう思うのですか?」

「人の気持ちを読むのが得意なんです。接客業をしているとついつい観察してしまって・・・」

「こんな気持ち初めてなんです。」涼子はカップを置くとゆっくりと言葉を紡ぎだした。

「今まで仕事ばっかりで、誰かと過ごすとかあまりなくて、そんなある日、猫がここのショップカードを持って来たんです。それで来てみたらあの人が居て、凄く気になって・・・話してみると初めて会った気がしないくらい話しやすくて、気がつけば彼のことを考えている自分がいて・・・」

「気持ちを伝えてみてはいかがですか?」

「それは無理です。だって年も離れているし、それに彼はきっと私のことただのお客さんとしか見ていないと思いますし・・・」

「少し昔話におつきあい願えますか?」マスターはそういうと涼子の前にクッキーと紅茶を差し出した。

「昔、凄くお世話になった女性が居ました。でも、彼女のことを思ってとった勝手な行動で彼女を傷つけて、彼女に深い心の傷をつけてしまったことがあるんです。そんな彼女になんとかして恩返しがしたいと思い私はここに店を構えました。彼女と話す時間を楽しみたいと。初めて彼女がここに来た時、本当に幸せでした。」

「それから彼女とは?」

「彼女は僕に気づいていないんです。」

「え?」

「涼子さん・・・あなたですよ。」マスターの言葉に涼子はただただマスターの顔を見つめることしかできない。

「信じてもらえるかどうかわかりませんが、正直に話しますね。涼子さん、昔猫を飼われていましたよね?名前はぼたん」

「ええ・・・でもどうしてそれを?」

「あなたはぼたんを親戚に預けましたね?そして、ぼたんはあなたの家に向かう途中、事故で命を落とした・・・」

「はい・・・私がちゃんと守れなかったから・・・あの子家に帰りたくて」涼子はいつの間にか泣いていた。

「違いますよ。あの日彼は、あなたにさようならとありがとうを言うためにあなたのもとに向かったのです。」

「・・・?」

「あなたとお別れの挨拶をせずに離れたことを後悔したんです。あなと共に過ごした時間はとても幸せで、一緒に笑ったり、泣いたり、時には恋の相談を聞いたり、寒い日は同じベッドで眠って、ずっと私の頭をなでてくれていたあなた。私はあなたの膝の上が大好きでした。温かくて優しくて・・・もちろん、離れると知った時は悲しかったです。でもそれは、あなたの意思でもなく、どうしようもないことだった。それでも、あなたは、私を手放したことを後悔し、わたしのことを思い続けてくれたあなたのこと・・・大好きなあなたの笑顔が見れなくなって凄く悲しかったです。」

「ぼたん・・・なの?」

「信じて頂けますか?」

「・・・わからないわ・・・」涼子はカップに視線を落として呟く

「そうですね。わたしも最初自分が置かれた立場を理解出来ませんでした。あの日、記憶にあるのはまぶしい光とブレーキ音・・・そして目を覚ました時には、この姿でこのバーに居ました。このバーには不思議な力があるんです。ここに来るお客様はもちろん、人間のお客様・・・そして、たくさんの猫たちの語り場なんです。一歩外に出れば人の形を保ことは出来ません。」

「あなたも猫に戻るの?」

「いいえ・・・私は、猫に戻ることはありません。私の存在じたいいつ消えてもおかしくない状況だと思っています。一度失った命なのですから・・・」

「そんな・・・」涼子は視線をマスターに戻す。ぼたんは私の最愛のパートナー。どこに行くのも一緒だった。屋根の上で一緒に昼寝もしたし、雷の夜は抱きしめあって眠ったことも。優しい目をした紳士な猫。何も言わずに私の傍に寄り添ってくれた素敵なパートナー・・・

「遅くなりました・・・」マスターは涼子の手をとり優しい笑顔を向ける。

「わたしと大切な時間を過ごして頂いてありがとうございました。子猫だった私をあなたがもし、保護していただかなったらと考えると怖くて仕方がありません。あの日も、どうしてもあなたにありがとうを言いたくて、きっと後悔があったのでしょう。最後にあなたの笑顔が見たいと思い・・・神様からのプレゼントだと私は思っています。」

「・・・ごめんなさい・・・」涼子は声を絞り出すように言った。

「・・・あなたを助けることが出来なくて・・・事故にあったと聞いて、私はあなたが居なくなるなんて知らなくて、いつもあるあなたの姿が見えなくて・・・」もう言葉が続かなかった。

「謝らないで下さい。わたしはあなたの泣き顔を見るためにここに居ません。わたしの大好きな笑顔をみせて下さい。」

「ぼたん・・・」マスターは泣きじゃくる涼子の髪を優しく撫でる。

「あなたがしてくれたようにうまく出来ませんね・・・」マスターが困り顔で呟く。

「違います・・・今はまだ状況が飲み込めなくてが出来なくて・・・」

「・・・・私のたからものです・・・」マスターは奥の棚から何かを取り出すと涼子の前に差し出した。小さなペンダントトップかわいい猫のイラストとたどたどしい文字で書かれた名前。

「これ・・・わたしがぼたんにあげた・・・」

「はい。あなたからのプレゼント。私が目を覚ました時、足元に落ちていました。素敵な素敵な思い出です。」

「ぼたん・・・気づかなくてごめんなさい。」

「いいえ・・・こんなこと信じる方が難しいことです。わたしですら状況を飲み込むまで時間を要しました。」

「ぼたん・・・ありがとう」涼子はクッと顔を上げると笑顔で答える。

「わたしの大好きな凉ちゃん」マスターは嬉しそうに笑う。

それから、閉店まで二人は思いで話に花を咲かせた。閉店後、涼子はマスターと共にグラスワインを飲みながら穏やかな時間を過ごしていた。

「まさか、ぼたんとお酒を飲むとは思ってなかった」涼子はソファーに腰をかけながら呟いた。

「ここの喫茶店は猫にとって唯一、人と同じ感覚を感じることの出来る空間なんです。ここにはたくさんの猫達が来ます。猫たちは色んな思いを持ってここにやって来ます。人が嫌いな猫もいれば、人が大好きな猫もいます。猫も人と同じで大切に思う誰かとここに来ます。わたしはそんな猫達を見るのが楽しみなんです。」

「そっか・・・ぼたんは今幸せ?」

「はい、とても」

「良かった」

「あなたは?」

「・・・幸せだよ。」涼子はグラスを傾けながら答えた。

「ねぇ・・・ぼたん・・・ぼたんは人になったんだよね?」涼子は視線をグラスに落としたまま言葉を紡ぐ。

「ええ・・・普通の猫はこの店から一歩外に出ると猫の姿に戻ってしまいます。でもわたしはこの姿のままです。」

「そう・・・」

「聞かないのですか?」マスターの言葉に涼子は顔をあげる

「何?」

「あなたの考えていることぐらいわかりますよ。それを確かめないのですか?」

「確かめなくても・・・分かってしまったから」

「そうですか・・・」

「でもね・・・ぼたん・・・私やっぱり彼が好き・・・猫とか人とか関係なくて彼が好き・・・だから辛い・・・」

「・・・」

「ごめんね~ぼたん!しんみりしちゃった~私、そろそろ帰るね!ツバキ待ってると思うし・・・」

「涼子さん・・・」

「大丈夫!ツバキには言わないから、何も変わらないよ!」涼子はヨシ!と腰を上げるとグーッと背伸びをした。

「送りますよ」

「大丈夫!明日の準備とかもあるでしょ?」

「ですが・・・」

「ツバキに変に思われても困るしね?」

「いつでも来て下さいね」

「来るよ!ここのコーヒー大好きだもん。ここのショップカードを持たせたのってあなたなの?」

「違いますよ。彼が勝手にしたことですよ。」

「ちょっとショックかも~」

「えっ?」

「もし、わたしがここ見つけなかったらどうしたの?」

「信じていましたから、絶対あなたに会えるって」マスターの言葉に涼子は頬を赤らめた。

「ずるい・・・そんなことしたら、ぼたんに恋しちゃうじゃん!」

「・・・いいですよ」

「私は良くない!だってぼたんはあくまでもわたしの家族だもん!大切な家族・・・」

「ありがとうございます」

「ぼたん・・・やだっ・・・泣かないでよ・・・困るじゃん・・・」

「すみません。嬉しくて・・・」

「ぼたんが泣くと・・・つられちゃうじゃん!ばか~」涼子はマスターを軽くはたいた。

「すみません。それではまた。」

「うん!おやすみ~」涼子は軽い足取りで階段を降りてそのまま家路を急ぐ。

 

いろいろなことが頭の中で回っているけど今は何よりもツバキに会いたかった。

リビングの真ん中でツバキはいつものようににゃ~んと鳴いた。涼子はツバキの隣に腰を下ろすと、まるっこい背中を優しく撫でた。

「ただいま・・・ツバキ」

「なぁ~ん」ツバキは短く返事を返した。

「今日ね。凄く素敵なことがあったの。でもね・・・内容は内緒。」ツバキは涼子の動向をじっと見守るように涼子から視線を反らさない。

「明日・・・カフェに行って~おいしいカフェラテのみたいなぁ・・・」涼子はそう言うと席を発ちバスルームへと姿を消した。ツバキは涼子の姿を見えなくなるとベランダから一目散に走り出した。行き先はバイト先だ。

ツバキは店につくやいなや2階へと急ぐ。マスターは音楽を聞きながら明日の仕込みをしていた。

「マスター・・・」ツバキの声にマスターは一端手を休めた。

「こんな時間にどうしたのですか?」

「今日涼子さん来たよね?」

「ええ。」

「何かあったの?」ツバキはマスターの手元に視線を落としたまま言った。

「涼子さんに話ました。私のことを」

「そう・・・なんだ・・・」ツバキはグッと手に力を入れる。

「涼子さん何か言っていましたか?

「何も・・・俺じゃまかな?」

「どうしてですか?」

「だってさ・・・涼子さん凄く嬉しそうだったからさ・・・」

「私も凄く楽しい時間を過ごせました」

「・・・良かったじゃん・・・涼子さんとさ・・・気持ちが通じて・・・」ツバキは今にも泣きそうな声で言った。

「ツバキは涼子さんのことが好きなんですね。」

「そうだけど・・・別にマスターから取ってやろうって気持ちはないよ・・・」

「何か勘違いしていませんか?」

「何が?」

「私と涼子さんはあくまで親友です。恋愛感情は一切ありませんよ」

「恋愛感情がなければそこまで一人の女性に思い入れできないじゃん」ツバキの言葉にマスターは声を出して笑いだした。

「何で笑うんだよ」ツバキは不機嫌さを隠しもせずに声を荒げる。

「すみません。若いっていいなぁと思いまして・・・ツバキ。私と涼子さんに間には恋人以上の関係があります。ですが・・・あなたが涼子さんを思う気持ちとは異なります。今日、彼女とお話しました。そして、私が猫であったことはツバキに言わないで下さいととも言いました。それは、あなたとの関係を壊したくなかったからです。でも、すれ違ったままでは絶対に後悔するので・・・ツバキ、涼子さんの思い人は私ではなく、あなたです。彼女はあなたが猫であることを受け止めた上で、出した答えです。あなたがこの先どうしていくのか、それは私の決めることではありませんし、その権利も持っていません。ここから先はあなたがた二人で決めることです。さぁ、お話はおしまいです。涼子さんきっと心配していますよ。その様子だと・・・彼女を一人部屋に残してきたのでは?」

「・・・その余裕凄くむかくつ・・・」ツバキは踵を返すとそのままカフェを後にした。

若いってやっぱりいいな・・・とマスターは呟くとそのまま仕込みの続きに入る。

一方涼子はバスルームから出てツバキの姿を探すが見当たらす、ダイニングテーブルに腰を下ろした。本当に夢をみているみたい・・・涼子はそうつぶやくと戸棚から一枚の写真を取り出す。写真の中には小さな涼子が両手で大きなぼたんを抱えて笑っていた。その写真を大切にしまうとキッチンの前に立ちカフェラテを入れる。本当は初恋の彼に入れてあげたかったけれど・・・涼子はそう呟きながらカップを温める。ミルクたっぷりのカフェオレに隠し味のシロップ。ハチミツはだめだけど・・・メープルシロップならいいよね。涼子は一人事を繰り返す。部屋の中にはおいしいコーヒーと甘いミルクの香り。外の雪とは対照的に温かい雰囲気が部屋を包み込む。

「なぉ~ん」涼子の足元でツバキが鳴いた。

「おかえり。パトロール?」涼子はツバキと目線を合わせる。ツバキはもう一度鳴くといつものソファーに丸くなる。

「そっけないんだから・・・」涼子はカフェラテのカップを取ると丸くなるツバキの隣に腰をおろす。鼻先の香りに刺激されたのかツバキは鼻先をカップの伸ばす。

「だめよ。今のあなたは飲めないでしょ?」涼子の言葉にツバキの視線がカップから涼子に移る。

「だめね・・・意識しないでいようと思っていたのに・・・カフェの店員さんあなたでしょ?」涼子の問いかけにツバキは何も返さない。

「猫の時は人の言葉もわからないのかしら?まぁいいわ。ツバキはツバキだし、彼は彼だし・・・でもちょっと残念。わたしね。彼の為においしいカフェラテを入れてあげたかったの・・・」ツバキはただただ涼子の横顔を見つめるだけ。

「今度・・・マスターに頼んでキッチンかりようかな?そうしたら飲んでもらえるもんね?」そういった涼子の横顔はすごく寂しげだった。

「ヨシッ!気持ち切り替えて仕事しなきゃ!」涼子は鞄から書類を取り出すと明日使うプレゼンのスライドに取りかかる。パソコンと向き合う涼子を横目にツバキはゆっくりと涼子の隣に歩み寄る。そのまま涼子の足元に寄り添うとすやすや寝息をたてる。

「ツバキとの距離・・・0メートル・・・」涼子は一言呟くとそのまま仕事に集中する。どれくら時間が経ったのかは分からないが、涼子はツバキとならびいつの間にか眠っていた。ツバキがおそるおそる涼子に触れてみるが起きる気配はない。ツバキは辺りを見回し何かかけるものをと探すが、猫の身体では思うように出来ない。諦めたツバキは涼子の足元で小さく鳴いた。ソファーを踏み台に大きく足を蹴るとテーブルの上に乗る事が出来た。本当はテーブルの上に乗ると怒られるけど・・・と心の中で呟く。ふと目に入ったのは冷めきったカフェラテ。ツバキはカップの中を覗き込む。中身は3分の1程になっていた。コーヒーの匂いにつられてツバキは前足をカップの中に伸ばす。少し深めのカップはそのまま弧を描きツバキの足元に水たまりを作った。慌てたツバキは自分の身体でコーヒーをせき止める。箱座りをしたままツバキは思考をフルに働かせる。近くにはパソコンと多量の資料。これらをコーヒーで汚すわけにはいかない・・・ツバキは足元に溢れるコーヒーをペロッと舐めた。猫の姿ではあまり甘みは感じない。少し苦みがきつい。きっとカフェでは美味しいと感じることが出来るはずなのに・・・ツバキはもう一度舐めた。

「苦い・・・」自分の発した声に驚き立ち上がる。大きな音に涼子も目を覚ました。

「これは・・・ゆめ?」涼子はぼんやりした頭で考える。

「夢なのかな?」ツバキがカフェラテをタオルでふきながら呟く。

「夢なら覚めないで欲しいな・・・」涼子はそういうともう一度目を閉じた。ツバキは汚れたシャツを洗濯機に入れるとタオルと一緒に回す。勝手知ったるとばかりにクローゼットから自分が着れそうなシャツを拝借する。テーブルの上を片付け、涼子にブランケットをかける。簡単なことなのに、同じだけ指があるのに出来ないことと出来ることがこんなにも違うなんて・・・ツバキは自分の手を見つめながら考える。この魔法が解けなければいいのに・・・ツバキは昔読んだ童話を思い出しながら涼子の寝顔を見つめる。人魚姫は人間になって声を失ったんだっけな・・・ツバキは涼子のほほに手を添えるとチュッとキスをする。涼子が目覚めるほんの数分前の出来事で・・・涼子とツバキが甘くて苦いカフェラテを飲むほんの数時間前の出来事。その後の二人はどうなったのか?マスターや喫茶店に通うお客様はどうなったのか?そのお話はまた今度・・・

 

END

 

長編におつきあいありがとうございました。誤字脱字が多くて申し訳ございません。

少しでもほっこりしてもらえればいいなと思って書いてみました。

NARA